[ 花 ]



ほそい ほそい 腕だった。
青白い肌に 透ける青い血管。
親指と人差し指の輪で 充分に握れてしまう程に痩せ細って
かろうじて弾力があると云った程度の。
もしかして その皮膚をほんの少し傷付けて
そこから するすると剥いてしまったら
真ッ白な骨だけが残るのではないか とさえ思える程の。


ほそい ほそい 指先に 白い爪が 咲いている。


まだ 血は赤いのだろうか。
この冷たい躯に
まだ 血は流れているのだろうか。


時を刻む毎に 綺麗に綺麗になってゆく。
それはあからさまな外見の変化などではなく
痩せ細ってゆく 躯の 内部から
匂い立つように命が 咲き誇っているのだ。
開ききった大輪の花弁のように 鮮やかに。
その あまりの眩しさに目を奪われてしまって
「このひとは 死ぬのだ」と
はっきり 気が付いた。


このひとを大切だと思った事は あまり無かったけれど
死んだら 嫌だと思った。
このひとがいなくなるのは 嫌だと思った。


明るすぎる蝋燭は 燃え尽きるのも早いのだと。
神様は いつだって 欲しいものばかりを取り上げてしまわれる。

どうして あのひとは笑っていたのだろう。
どうして あんなに倖せそうに笑えたのだろう。


あまりにも その笑顔が しあわせそうだったので。
胸が痛くて 胸が痛くて
どうしてか ひどく 泣きたくなった。


泣き出してしまえば もう それだけだった


ほそい ほそい 躯は
真ッ白い 小さな 小さな かけらになり。


もう あの 冷たいてのひらに くちづける事もできない。











戻ル







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