[ 遠國 ]



此の世の何処か　あの世でない何処か

昨日より遠く　明日より見えない処にあると云う

不思議な処



猫が啼いた　此処からお逃げと



「行ってみたいな　よその国」

夕方呟いたコドモはもういない　黄昏よりも遠い国へ

願いの侭に攫われた　此処は願いの叶う処

代わりに全てを失うけれど



赤いマントに黒い空　覚えているのは其ればかり

立ち竦む空に願い星　掌には空の鳥籠

此処では星は降り注ぎ　てのひらに全て受け止めて

涙も祈りも忘れて謳う

夜啼く鳥に想いを馳せ　眠れば全て元通りになると



猫が啼く　此処へおいでと



迷い込んだ袋小路で　見つけたものは幻にすぎず

やがて失くすものばかり　隠した宝の地図の場所なんて

とうの昔に忘れました　何時か見た　夢と同じに



此処で眠ろう　此処で笑おう　此処で何もかも手に入れて

全てを失い　又　目覚める

隣に　あの人がいてくれたなら

又　眠る時も　淋しくはないでしょう



猫が啼く　此処からお逃げと



逃げる場所など　ありはしないのに









戻ル

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